【8-2】第8章 鑑定評価の手順第4節〜10節

鑑定基準第8章

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第4節 対象不動産の確認
対象不動産の確認に当たっては、第1節により確定された対象不動産についてその内容を明瞭にしなければならない。
対象不動産の確認は、対象不動産の物的確認及び権利の態様の確認に分けられ、実地調査、聴聞、公的資料の確認等により、的確に行う必要がある。

Ⅰ 対象不動産の物的確認
対象不動産の物的確認に当たっては、土地についてはその所在、地番、数量等を、建物についてはこれらのほか家屋番号、建物の構造、用途等を、それぞれ実地に確認することを通じて、第1節により確定された対象不動産の存否及びその内容を、確認資料(第5節Ⅰ参照)を用いて照合しなければならない。
また、物的確認を行うに当たっては、対象不動産について登記事項証明書等により登記又は登録されている内容とその実態との異同について把握する必要がある。

Ⅱ 権利の態様の確認
権利の態様の確認に当たっては、Ⅰによって物的に確認された対象不動産について、当該不動産に係るすべての権利関係を明瞭に確認することにより、第1節により確定された鑑定評価の対象となる権利の存否及びその内容を、確認資料を用いて照合しなければならない。

第5節 資料の収集及び整理
鑑定評価の成果は、採用した資料によって左右されるものであるから、資料の収集及び整理は、鑑定評価の作業に活用し得るように適切かつ合理的な計画に基づき、実地調査、聴聞、公的資料の確認等により的確に行うものとし、公正妥当を欠くようなことがあってはならない。
鑑定評価に必要な資料は、おおむね次のように分けられる。

Ⅰ 確認資料
確認資料とは、不動産の物的確認及び権利の態様の確認に必要な資料をいう。
確認資料としては、登記事項証明書、土地又は建物等の図面、写真、不動産の所在地に関する地図等があげられる。

Ⅱ 要因資料
要因資料とは、価格形成要因に照応する資料をいう。
要因資料は、一般的要因に係る一般資料、地域要因に係る地域資料及び個別的要因に係る個別資料に分けられる。
一般資料及び地域資料は、平素からできるだけ広くかつ組織的に収集しておくべきである。
個別資料は、対象不動産の種類、対象確定条件等案件の相違に応じて適切に収集すべきである。

Ⅲ 事例資料
事例資料とは、鑑定評価の手法の適用に必要とされる現実の取引価格、賃料等に関する資料をいう。
事例資料としては、建設事例、取引事例、収益事例、賃貸借等の事例等があげられる。
なお、鑑定評価先例価格は鑑定評価に当たって参考資料とし得る場合があり、売買希望価格等についても同様である。

第6節 資料の検討及び価格形成要因の分析
資料の検討に当たっては、収集された資料についてそれが鑑定評価の作業に活用するために必要にして十分な資料であるか否か、資料が信頼するに足りるものであるか否かについて考察しなければならない。
この場合においては、価格形成要因を分析するために、その資料が対象不動産の種類並びに鑑定評価の依頼目的及び条件に即応しているか否かについて検討すべきである。
価格形成要因の分析に当たっては、収集された資料に基づき、一般的要因を分析するとともに、地域分析及び個別分析を通じて対象不動産についてその最有効使用を判定しなければならない。
さらに、価格形成要因について、専門職業家としての注意を尽くしてもなお対象不動産の価格形成に重大な影響を与える要因が十分に判明しない場合には、原則として他の専門家が行った調査結果等を活用することが必要である。
ただし、依頼目的や依頼者の事情による制約がある場合には、依頼者の同意を得て、想定上の条件を設定して鑑定評価を行うこと若しくは調査範囲等条件を設定して鑑定評価を行うこと、又は自己の調査分析能力の範囲内で当該要因に係る価格形成上の影響の程度を推定して鑑定評価を行うことができる。
この場合、想定上の条件又は調査範囲等条件を設定するためには条件設定に係る一定の要件を満たすことが必要であり、また、推定を行うためには客観的な推定ができると認められることが必要である。

第7節 鑑定評価の手法の適用
鑑定評価の手法の適用に当たっては、鑑定評価の手法を当該案件に即して適切に適用すべきである。
この場合、地域分析及び個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価の手法を適用すべきであり、対象不動産の種類、所在地の実情、資料の信頼性等により複数の鑑定評価の手法の適用が困難な場合においても、その考え方をできるだけ参酌するように努めるべきである。

第8節 試算価格又は試算賃料の調整
試算価格又は試算賃料の調整とは、鑑定評価の複数の手法により求められた各試算価格又は試算賃料の再吟味及び各試算価格又は試算賃料が有する説得力に係る判断を行い、鑑定評価における最終判断である鑑定評価額の決定に導く作業をいう。
試算価格又は試算賃料の調整に当たっては、対象不動産の価格形成を論理的かつ実証的に説明できるようにすることが重要である。
このため、鑑定評価の手順の各段階について、客観的、批判的に再吟味し、その結果を踏まえた各試算価格又は各試算賃料が有する説得力の違いを適切に反映することによりこれを行うものとする。
この場合において、特に次の事項に留意すべきである。

Ⅰ 各試算価格又は試算賃料の再吟味
1.資料の選択、検討及び活用の適否
2.不動産の価格に関する諸原則の当該案件に即応した活用の適否
3.一般的要因の分析並びに地域分析及び個別分析の適否
4.各手法の適用において行った各種補正、修正等に係る判断の適否
5.各手法に共通する価格形成要因に係る判断の整合性
6.単価と総額との関連の適否

Ⅱ 各試算価格又は試算賃料が有する説得力に係る判断
1.対象不動産に係る地域分析及び個別分析の結果と各手法との適合性
2.各手法の適用において採用した資料の特性及び限界からくる相対的信頼性

第9節 鑑定評価額の決定
第1節から第8節で述べた手順を十分に尽した後、専門職業家としての良心に従い適正と判断される鑑定評価額を決定すべきである。
この場合において、地価公示法施行規則第1条第1項に規定する国土交通大臣が定める公示区域において土地の正常価格を求めるときは、公示価格を規準としなければならない。

第10節 鑑定評価報告書の作成
鑑定評価額が決定されたときは、鑑定評価報告書を作成するものとする。

ステップ0

第4節では、対象不動産の物的確認権利の態様の確認が求められ、実地調査公的資料を用いた確認が強調されている。

第5節では、確認資料要因資料事例資料の3種の資料の収集及び整理が重要とされ、特に客観性と信頼性のあるデータの活用が重視される。

第6節では、資料の妥当性を検討し、価格形成要因の分析を行う。その際、最有効使用の判定も必要とされ、場合によっては他の専門家の調査結果を活用したり、想定上の条件調査範囲等条件を設定する。

第7節では、対象不動産の市場特性に応じた複数の鑑定評価の手法を適用することが求められ、難しい場合も考え方を参酌するよう努める。

第8節では、各試算価格又は試算賃料再吟味説得力の評価により、鑑定評価額の調整が行われる。特に、資料の信頼性分析の整合性が重要視される。

第9節では、これまでの手順を踏まえ、専門職業家の良心に従い鑑定評価額を決定すべきことが述べられ、公示価格の活用も要請されている。

第10節では、評価額が決定された後に鑑定評価報告書を作成することが求められる。

ステップ1

第4節 対象不動産の確認

対象不動産の確認に当たっては、第1節により確定された対象不動産についてその内容を明瞭にしなければならない。

対象不動産の確認は、対象不動産の物的確認及び権利の態様の確認に分けられ、実地調査聴聞公的資料の確認等により、的確に行う必要がある。

Ⅰ 対象不動産の物的確認

対象不動産の物的確認に当たっては、土地についてはその所在地番数量等を、建物についてはこれらのほか家屋番号建物の構造用途等を、それぞれ実地に確認することを通じて、第1節により確定された対象不動産の存否及びその内容を、確認資料(第5節Ⅰ参照)を用いて照合しなければならない。

また、物的確認を行うに当たっては、対象不動産について登記事項証明書等により登記又は登録されている内容その実態との異同について把握する必要がある。

Ⅱ 権利の態様の確認

権利の態様の確認に当たっては、Ⅰによって物的に確認された対象不動産について、当該不動産に係るすべての権利関係を明瞭に確認することにより、第1節により確定された鑑定評価の対象となる権利の存否及びその内容を、確認資料を用いて照合しなければならない。

第5節 資料の収集及び整理

鑑定評価の成果は、採用した資料によって左右されるものであるから、資料の収集及び整理は、鑑定評価の作業に活用し得るよう適切かつ合理的な計画に基づき、実地調査聴聞公的資料の確認等により的確に行うものとし、公正妥当を欠くようなことがあってはならない。

鑑定評価に必要な資料は、おおむね次のように分けられる。

確認資料

確認資料とは、不動産の物的確認及び権利の態様の確認に必要な資料をいう。

確認資料としては、登記事項証明書土地又は建物等の図面写真不動産の所在地に関する地図等があげられる。

要因資料

要因資料とは、価格形成要因に照応する資料をいう。

要因資料は、一般的要因に係る一般資料、地域要因に係る地域資料及び個別的要因に係る個別資料に分けられる。

一般資料及び地域資料は、平素からできるだけ広くかつ組織的に収集しておくべきである。

個別資料は、対象不動産の種類対象確定条件等案件の相違に応じて適切に収集すべきである。

事例資料

事例資料とは、鑑定評価の手法の適用に必要とされる現実の取引価格賃料等に関する資料をいう。

事例資料としては、建設事例取引事例収益事例賃貸借等の事例等があげられる。

なお、鑑定評価先例価格は鑑定評価に当たって参考資料とし得る場合があり、売買希望価格等についても同様である。

第6節 資料の検討及び価格形成要因の分析

資料の検討に当たっては、収集された資料についてそれが鑑定評価の作業に活用するために必要にして十分な資料であるか否か、資料が信頼するに足りるものであるか否かについて考察しなければならない。

この場合においては、価格形成要因を分析するために、その資料が対象不動産の種類並びに鑑定評価の依頼目的及び条件に即応しているか否かについて検討すべきである。

価格形成要因の分析に当たっては、収集された資料に基づき、一般的要因を分析するとともに、地域分析及び個別分析を通じて対象不動産についてその最有効使用を判定しなければならない。

さらに、価格形成要因について、専門職業家としての注意を尽くしてもなお対象不動産の価格形成に重大な影響を与える要因が十分に判明しない場合には、原則として他の専門家が行った調査結果等を活用することが必要である。

ただし、依頼目的や依頼者の事情による制約がある場合には、依頼者の同意を得て、想定上の条件を設定して鑑定評価を行うこと若しくは調査範囲等条件を設定して鑑定評価を行うこと、又は自己の調査分析能力の範囲内で当該要因に係る価格形成上の影響の程度を推定して鑑定評価を行うことができる。

この場合、想定上の条件又は調査範囲等条件を設定するためには条件設定に係る一定の要件を満たすことが必要であり、また、推定を行うためには客観的な推定ができると認められることが必要である。

第7節 鑑定評価の手法の適用

鑑定評価の手法の適用に当たっては、鑑定評価の手法を当該案件に即して適切に適用すべきである。

この場合、地域分析及び個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価の手法を適用すべきであり、対象不動産の種類所在地の実情資料の信頼性等により複数の鑑定評価の手法の適用が困難な場合においても、その考え方をできるだけ参酌するように努めるべきである。

第8節 試算価格又は試算賃料の調整

試算価格又は試算賃料の調整とは、鑑定評価の複数の手法により求められた各試算価格又は試算賃料の再吟味及び各試算価格又は試算賃料が有する説得力に係る判断を行い、鑑定評価における最終判断である鑑定評価額の決定に導く作業をいう。

試算価格又は試算賃料の調整に当たっては、対象不動産の価格形成を論理的かつ実証的に説明できるようにすることが重要である。

このため、鑑定評価の手順の各段階について、客観的、批判的に再吟味し、その結果を踏まえた各試算価格又は各試算賃料が有する説得力の違いを適切に反映することによりこれを行うものとする。

この場合において、特に次の事項に留意すべきである。

Ⅰ 各試算価格又は試算賃料の再吟味

1.資料の選択、検討及び活用の適否

2.不動産の価格に関する諸原則の当該案件に即応した活用の適否

3.一般的要因の分析並びに地域分析及び個別分析の適否

4.各手法の適用において行った各種補正修正等に係る判断の適否

5.各手法に共通する価格形成要因に係る判断の整合性

6.単価と総額との関連の適否

Ⅱ 各試算価格又は試算賃料が有する説得力に係る判断

1.対象不動産に係る地域分析及び個別分析の結果各手法との適合性

2.各手法の適用において採用した資料の特性及び限界からくる相対的信頼性

第9節 鑑定評価額の決定

第1節から第8節で述べた手順を十分に尽した後、専門職業家としての良心に従い適正と判断される鑑定評価額を決定すべきである。

この場合において、地価公示法施行規則第1条第1項に規定する国土交通大臣が定める公示区域において土地の正常価格を求めるときは、公示価格を規準としなければならない。

第10節 鑑定評価報告書の作成

鑑定評価額が決定されたときは、鑑定評価報告書を作成するものとする。

ステップ2

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