【6-1】地域分析及び個別分析

鑑定基準第6章

本文

第6章 地域分析及び個別分析

対象不動産の地域分析及び個別分析を行うに当たっては、まず、それらの基礎となる一般的要因がどのような具体的な影響力を持っているかを的確に把握しておくことが必要である。

第1節 地域分析

Ⅰ 地域分析の意義

地域分析とは、その対象不動産がどのような地域に存するか、その地域はどのような特性を有するか、また、対象不動産に係る市場はどのような特性を有するか、及びそれらの特性はその地域内の不動産の利用形態と価格形成について全般的にどのような影響力を持っているかを分析し、判定することをいう。

Ⅱ 地域分析の適用

1.地域及びその特性

地域分析に当たって特に重要な地域は、用途的観点から区分される地域(以下「用途的地域」という。)、すなわち近隣地域及びその類似地域と、近隣地域及びこれと相関関係にある類似地域を含むより広域的な地域、すなわち同一需給圏である。

また、近隣地域の特性は、通常、その地域に属する不動産の一般的な標準的使用に具体的に現れるが、この標準的使用は、利用形態からみた地域相互間の相対的位置関係及び価格形成を明らかにする手掛りとなるとともに、その地域に属する不動産のそれぞれについての最有効使用を判定する有力な標準となるものである。

なお、不動産の属する地域は固定的なものではなく、地域の特性を形成する地域要因も常に変動するものであることから、地域分析に当たっては、対象不動産に係る市場の特性の把握の結果を踏まえて地域要因及び標準的使用の現状と将来の動向とをあわせて分析し、標準的使用を判定しなければならない。

(1)用途的地域

① 近隣地域

近隣地域とは、対象不動産の属する用途的地域であって、より大きな規模と内容とを持つ地域である都市あるいは農村等の内部にあって、居住、商業活動、工業生産活動等人の生活と活動とに関して、ある特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを示している地域をいい、対象不動産の価格の形成に関して直接に影響を与えるような特性を持つものである。

近隣地域は、その地域の特性を形成する地域要因の推移、動向の如何によって、変化していくものである。

② 類似地域

類似地域とは、近隣地域の地域の特性と類似する特性を有する地域であり、その地域に属する不動産は、特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを持つものである。この地域のまとまりは、近隣地域の特性との類似性を前提として判定されるものである。

(2)同一需給圏

同一需給圏とは、一般に対象不動産と代替関係が成立して、その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域をいう。それは、近隣地域を含んでより広域的であり、近隣地域と相関関係にある類似地域等の存する範囲を規定するものである。

一般に、近隣地域と同一需給圏内に存する類似地域とは、隣接すると否とにかかわらず、その地域要因の類似性に基づいて、それぞれの地域の構成分子である不動産相互の間に代替、競争等の関係が成立し、その結果、両地域は相互に影響を及ぼすものである。

また、近隣地域の外かつ同一需給圏内の類似地域の外に存する不動産であっても、同一需給圏内に存し対象不動産とその用途、規模、品等等の類似性に基づいて、これら相互の間に代替、競争等の関係が成立する場合がある。

同一需給圏は、不動産の種類、性格及び規模に応じた需要者の選好性によってその地域的範囲を異にするものであるから、その種類、性格及び規模に応じて需要者の選好性を的確に把握した上で適切に判定する必要がある。

同一需給圏の判定に当たって特に留意すべき基本的な事項は、次のとおりである。

① 宅地

ア 住宅地

同一需給圏は、一般に都心への通勤可能な地域の範囲に一致する傾向がある。ただし、地縁的選好性により地域的範囲が狭められる傾向がある。なお、地域の名声、品位等による選好性の強さが同一需給圏の地域的範囲に特に影響を与える場合があることに留意すべきである。

イ 商業地

同一需給圏は、高度商業地については、一般に広域的な商業背後地を基礎に成り立つ商業収益に関して代替性の及ぶ地域の範囲に一致する傾向があり、したがって、その範囲は高度商業地の性格に応じて広域的に形成される傾向がある。また、普通商業地については、一般に狭い商業背後地を基礎に成り立つ商業収益に関して代替性の及ぶ地域の範囲に一致する傾向がある。ただし、地縁的選好性により地域的範囲が狭められる傾向がある。

ウ 工業地

同一需給圏は、港湾、高速交通網等の利便性を指向する産業基盤指向型工業地等の大工場地については、一般に原材料、製品等の大規模な移動を可能にする高度の輸送機関に関して代替性を有する地域の範囲に一致する傾向があり、したがって、その地域的範囲は、全国的な規模となる傾向がある。また、製品の消費地への距離、消費規模等の市場接近性を指向する消費地指向型工業地等の中小工場地については、一般に製品の生産及び販売に関する費用の経済性に関して代替性を有する地域の範囲に一致する傾向がある。

エ 移行地

同一需給圏は、一般に当該土地が移行すると見込まれる土地の種別の同一需給圏と一致する傾向がある。ただし、熟成度の低い場合には、移行前の土地の種別の同一需給圏と同一のものとなる傾向がある。

② 農地

同一需給圏は、一般に当該農地を中心とする通常の農業生産活動の可能な地域の範囲内に立地する農業経営主体を中心とするそれぞれの農業生産活動の可能な地域の範囲に一致する傾向がある。

③ 林地

同一需給圏は、一般に当該林地を中心とする通常の林業生産活動の可能な地域の範囲内に立地する林業経営主体を中心とするそれぞれの林業生産活動の可能な地域の範囲に一致する傾向がある。

④ 見込地

同一需給圏は、一般に当該土地が転換すると見込まれる土地の種別の同一需給圏と一致する傾向がある。ただし、熟成度の低い場合には、転換前の土地の種別の同一需給圏と同一のものとなる傾向がある。

⑤ 建物及びその敷地

同一需給圏は、一般に当該敷地の用途に応じた同一需給圏と一致する傾向があるが、当該建物及びその敷地一体としての用途、規模、品等等によっては代替関係にある不動産の存する範囲が異なるために当該敷地の用途に応じた同一需給圏の範囲と一致しない場合がある。

2.対象不動産に係る市場の特性

地域分析における対象不動産に係る市場の特性の把握に当たっては、同一需給圏における市場参加者がどのような属性を有しており、どのような観点から不動産の利用形態を選択し、価格形成要因についての判断を行っているかを的確に把握することが重要である。あわせて同一需給圏における市場の需給動向を的確に把握する必要がある。

また、把握した市場の特性については、近隣地域における標準的使用の判定に反映させるとともに鑑定評価の手法の適用、試算価格又は試算賃料の調整等における各種の判断においても反映すべきである。

ステップ0

第6章 地域分析及び個別分析

不動産の地域分析及び個別分析を行うためには、まずその前提となる一般的要因の具体的な影響力を把握しておく必要がある。

第1節 地域分析

Ⅰ 地域分析の意義

地域分析とは、対象不動産が属する地域の特性市場特性が、不動産の利用形態価格形成にどのように影響するかを明らかにするものである。

Ⅱ 地域分析の適用

地域分析では、主に用途的地域(近隣地域・類似地域)と、これらを含む同一需給圏を分析対象とする。

  • 近隣地域:対象不動産が属し、直接的に価格に影響する特性を持つ地域
  • 類似地域:近隣地域と特性が類似し、地域的にまとまりをもつ地域
  • 同一需給圏:対象不動産と代替関係がある他の不動産が属する広域的圏域

近隣地域や類似地域の地域要因は常に変動しうるため、標準的使用現状将来の動向を踏まえた分析が必要である。

同一需給圏の判定(不動産の種別ごと)
  • 住宅地都心への通勤圏が基本だが、地縁的選好性等の影響も大きい
  • 商業地高度商業地では広域的な背後地普通商業地では狭い商業背後地
  • 工業地産業基盤指向型消費地指向型で圏域が異なる
  • 移行地見込地転換後の土地種別に基づく圏域が基本だが、熟成度に応じて例外あり
  • 農地林地生産活動の可能な地域が需給圏となる
2.市場の特性把握

地域分析では、市場参加者属性選好需給動向を正確に把握することが重要である。

市場特性は、標準的使用の判定や手法の適用試算価格・試算賃料の調整にも反映される。

ステップ1

第6章 地域分析及び個別分析

対象不動産の地域分析及び個別分析を行うに当たっては、まず、それらの基礎となる一般的要因がどのような具体的な影響力を持っているかを的確に把握しておくことが必要である。

第1節 地域分析

Ⅰ 地域分析の意義

地域分析とは、その対象不動産がどのような地域に存するか、その地域はどのような特性を有するか、また、対象不動産に係る市場はどのような特性を有するか、及びそれらの特性はその地域内の不動産の利用形態価格形成について全般的にどのような影響力を持っているかを分析し、判定することをいう。

Ⅱ 地域分析の適用

1.地域及びその特性

地域分析に当たって特に重要な地域は、用途的観点から区分される地域(以下「用途的地域」という。)、すなわち近隣地域及びその類似地域と、近隣地域及びこれと相関関係にある類似地域を含むより広域的な地域、すなわち同一需給圏である。

また、近隣地域の特性は、通常、その地域に属する不動産の一般的な標準的使用に具体的に現れるが、この標準的使用は、 ①利用形態からみた地域相互間の相対的位置関係及び価格形成を明らかにする手掛りとなるとともに、 ②その地域に属する不動産のそれぞれについての最有効使用を判定する有力な標準となるものである。

なお、不動産の属する地域は固定的なものではなく、地域の特性を形成する地域要因も常に変動するものであることから、地域分析に当たっては、対象不動産に係る市場の特性の把握の結果を踏まえて地域要因及び標準的使用の現状将来の動向とをあわせて分析し、標準的使用を判定しなければならない。

(1)用途的地域

① 近隣地域

近隣地域とは、対象不動産の属する用途的地域であって、より大きな規模と内容とを持つ地域である都市あるいは農村等の内部にあって、居住、商業活動、工業生産活動等人の生活と活動とに関して、ある特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを示している地域をいい、対象不動産の価格の形成に関して直接に影響を与えるような特性を持つものである。

近隣地域は、その地域の特性を形成する地域要因の推移、動向の如何によって、変化していくものである。

② 類似地域

類似地域とは、近隣地域の地域の特性と類似する特性を有する地域であり、その地域に属する不動産は、特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを持つものである。この地域のまとまりは、近隣地域の特性との類似性を前提として判定されるものである。

(2)同一需給圏

同一需給圏とは、一般に対象不動産と代替関係が成立して、その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域をいう。それは、近隣地域を含んでより広域的であり、近隣地域と相関関係にある類似地域等の存する範囲を規定するものである。

一般に、近隣地域と同一需給圏内に存する類似地域とは、隣接すると否とにかかわらず、その地域要因の類似性に基づいて、それぞれの地域の構成分子である不動産相互の間に代替、競争等の関係が成立し、その結果、両地域は相互に影響を及ぼすものである。

また、近隣地域の外かつ同一需給圏内の類似地域の外に存する不動産であっても、同一需給圏内に存し対象不動産とその用途規模品等等の類似性に基づいて、これら相互の間に代替、競争等の関係が成立する場合がある。

同一需給圏は、不動産の種類性格及び規模に応じた需要者の選好性によってその地域的範囲を異にするものであるから、その種類、性格及び規模に応じて需要者の選好性を的確に把握した上で適切に判定する必要がある。

同一需給圏の判定に当たって特に留意すべき基本的な事項は、次のとおりである。

① 宅地
ア 住宅地

同一需給圏は、一般に都心への通勤可能な地域の範囲に一致する傾向がある。ただし、地縁的選好性により地域的範囲が狭められる傾向がある。なお、地域の名声品位等による選好性の強さが同一需給圏の地域的範囲に特に影響を与える場合があることに留意すべきである。

イ 商業地

同一需給圏は、高度商業地については、一般に広域的な商業背後地を基礎に成り立つ商業収益に関して代替性の及ぶ地域の範囲に一致する傾向があり、したがって、その範囲は高度商業地の性格に応じて広域的に形成される傾向がある。また、普通商業地については、一般に狭い商業背後地を基礎に成り立つ商業収益に関して代替性の及ぶ地域の範囲に一致する傾向がある。ただし、地縁的選好性により地域的範囲が狭められる傾向がある。

ウ 工業地

同一需給圏は、港湾、高速交通網等の利便性を指向する産業基盤指向型工業地等の大工場地については、一般に原材料、製品等の大規模な移動を可能にする高度の輸送機関に関して代替性を有する地域の範囲に一致する傾向があり、したがって、その地域的範囲は、全国的な規模となる傾向がある。また、製品の消費地への距離、消費規模等の市場接近性を指向する消費地指向型工業地等の中小工場地については、一般に製品の生産及び販売に関する費用の経済性に関して代替性を有する地域の範囲に一致する傾向がある。

エ 移行地

同一需給圏は、一般に当該土地が移行すると見込まれる土地の種別の同一需給圏と一致する傾向がある。ただし、熟成度の低い場合には、移行前の土地の種別の同一需給圏と同一のものとなる傾向がある。

② 農地

同一需給圏は、一般に当該農地を中心とする通常の農業生産活動の可能な地域の範囲内に立地する農業経営主体を中心とするそれぞれの農業生産活動の可能な地域の範囲に一致する傾向がある。

③ 林地

同一需給圏は、一般に当該林地を中心とする通常の林業生産活動の可能な地域の範囲内に立地する林業経営主体を中心とするそれぞれの林業生産活動の可能な地域の範囲に一致する傾向がある。

④ 見込地

同一需給圏は、一般に当該土地が転換すると見込まれる土地の種別の同一需給圏と一致する傾向がある。ただし、熟成度の低い場合には、転換前の土地の種別の同一需給圏と同一のものとなる傾向がある。

⑤ 建物及びその敷地

同一需給圏は、一般に当該敷地の用途に応じた同一需給圏と一致する傾向があるが、当該建物及びその敷地一体としての用途、規模、品等等によっては代替関係にある不動産の存する範囲が異なるために当該敷地の用途に応じた同一需給圏の範囲と一致しない場合がある。

2.対象不動産に係る市場の特性

地域分析における対象不動産に係る市場の特性の把握に当たっては、同一需給圏における市場参加者がどのような属性を有しており、どのような観点から不動産の利用形態を選択し、価格形成要因についての判断を行っているかを的確に把握することが重要である。あわせて同一需給圏における市場の需給動向を的確に把握する必要がある。

また、把握した市場の特性については、近隣地域における標準的使用の判定に反映させるとともに鑑定評価の手法の適用試算価格又は試算賃料の調整等における各種の判断においても反映すべきである。

第6章 地域分析及び個別分析

対象不動産の地域分析及び個別分析を行うに当たっては、まず、それらの基礎となる一般的要因がどのような具体的な影響力を持っているかを的確に把握しておくことが必要である。

第1節 地域分析

Ⅰ 地域分析の意義

地域分析とは、その対象不動産がどのような地域に存するかその地域はどのような特性を有するか、また、対象不動産に係る市場はどのような特性を有するか、及びそれらの特性はその地域内の不動産の利用形態と価格形成について全般的にどのような影響力を持っているかを分析し、判定することをいう。

Ⅱ 地域分析の適用

1.地域及びその特性

地域分析に当たって特に重要な地域は、用途的観点から区分される地域(以下「用途的地域」という。)、すなわち近隣地域及びその類似地域と、近隣地域及びこれと相関関係にある類似地域を含むより広域的な地域、すなわち同一需給圏である。

また、近隣地域の特性は、通常、その地域に属する不動産の一般的な標準的使用に具体的に現れるが、この標準的使用は、 ①利用形態からみた地域相互間の相対的位置関係及び価格形成を明らかにする手掛りとなるとともに、 ②その地域に属する不動産のそれぞれについての最有効使用を判定する有力な標準となるものである。

なお、不動産の属する地域は固定的なものではなく、地域の特性を形成する地域要因も常に変動するものであることから、地域分析に当たっては、対象不動産に係る市場の特性の把握の結果を踏まえて地域要因及び標準的使用の現状将来の動向とをあわせて分析し、標準的使用を判定しなければならない。

(1)用途的地域

① 近隣地域

近隣地域とは、対象不動産の属する用途的地域であって、より大きな規模と内容とを持つ地域である都市あるいは農村等の内部にあって、居住、商業活動、工業生産活動等人の生活と活動とに関して、ある特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを示している地域をいい、対象不動産の価格の形成に関して直接に影響を与えるような特性を持つものである。

近隣地域は、その地域の特性を形成する地域要因の推移、動向の如何によって、変化していくものである。

② 類似地域

類似地域とは、近隣地域の地域の特性と類似する特性を有する地域であり、その地域に属する不動産は、特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを持つものである。この地域のまとまりは、近隣地域の特性との類似性を前提として判定されるものである。

(2)同一需給圏

同一需給圏とは、一般に対象不動産と代替関係が成立して、その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域をいう。それは、近隣地域を含んでより広域的であり、近隣地域と相関関係にある類似地域等の存する範囲を規定するものである。

一般に、近隣地域と同一需給圏内に存する類似地域とは、隣接すると否とにかかわらず、その地域要因の類似性に基づいて、それぞれの地域の構成分子である不動産相互の間に代替、競争等の関係が成立し、その結果、両地域は相互に影響を及ぼすものである。

また、近隣地域の外かつ同一需給圏内の類似地域の外に存する不動産であっても、同一需給圏内に存し対象不動産とその用途、規模、品等等の類似性に基づいて、これら相互の間に代替、競争等の関係が成立する場合がある。

同一需給圏は、不動産の種類、性格及び規模に応じた需要者の選好性によってその地域的範囲を異にするものであるから、その種類、性格及び規模に応じて需要者の選好性を的確に把握した上で適切に判定する必要がある。

同一需給圏の判定に当たって特に留意すべき基本的な事項は、次のとおりである。

① 宅地
ア 住宅地

同一需給圏は、一般に都心への通勤可能な地域の範囲に一致する傾向がある。ただし、地縁的選好性により地域的範囲が狭められる傾向がある。なお、地域の名声、品位等による選好性の強さが同一需給圏の地域的範囲に特に影響を与える場合があることに留意すべきである。

イ 商業地

同一需給圏は、高度商業地については、一般に広域的な商業背後地を基礎に成り立つ商業収益に関して代替性の及ぶ地域の範囲に一致する傾向があり、したがって、その範囲は高度商業地の性格に応じて広域的に形成される傾向がある。また、普通商業地については、一般に狭い商業背後地を基礎に成り立つ商業収益に関して代替性の及ぶ地域の範囲に一致する傾向がある。ただし、地縁的選好性により地域的範囲が狭められる傾向がある。

ウ 工業地

同一需給圏は、港湾、高速交通網等の利便性を指向する産業基盤指向型工業地等の大工場地については、一般に原材料、製品等の大規模な移動を可能にする高度の輸送機関に関して代替性を有する地域の範囲に一致する傾向があり、したがって、その地域的範囲は、全国的な規模となる傾向がある。また、製品の消費地への距離、消費規模等の市場接近性を指向する消費地指向型工業地等の中小工場地については、一般に製品の生産及び販売に関する費用の経済性に関して代替性を有する地域の範囲に一致する傾向がある。

エ 移行地

同一需給圏は、一般に当該土地が移行すると見込まれる土地の種別の同一需給圏と一致する傾向がある。ただし、熟成度の低い場合には、移行前の土地の種別の同一需給圏と同一のものとなる傾向がある。

② 農地

同一需給圏は、一般に当該農地を中心とする通常の農業生産活動の可能な地域の範囲内に立地する農業経営主体を中心とするそれぞれの農業生産活動の可能な地域の範囲に一致する傾向がある。

③ 林地

同一需給圏は、一般に当該林地を中心とする通常の林業生産活動の可能な地域の範囲内に立地する林業経営主体を中心とするそれぞれの林業生産活動の可能な地域の範囲に一致する傾向がある。

④ 見込地

同一需給圏は、一般に当該土地が転換すると見込まれる土地の種別の同一需給圏と一致する傾向がある。ただし、熟成度の低い場合には、転換前の土地の種別の同一需給圏と同一のものとなる傾向がある。

⑤ 建物及びその敷地

同一需給圏は、一般に当該敷地の用途に応じた同一需給圏と一致する傾向があるが、当該建物及びその敷地一体としての用途、規模、品等等によっては代替関係にある不動産の存する範囲が異なるために当該敷地の用途に応じた同一需給圏の範囲と一致しない場合がある。

2.対象不動産に係る市場の特性

地域分析における対象不動産に係る市場の特性の把握に当たっては、同一需給圏における市場参加者がどのような属性を有しており、どのような観点から不動産の利用形態を選択し、価格形成要因についての判断を行っているかを的確に把握することが重要である。あわせて同一需給圏における市場の需給動向を的確に把握する必要がある。

また、把握した市場の特性については、近隣地域における標準的使用の判定に反映させるとともに鑑定評価の手法の適用試算価格又は試算賃料の調整等における各種の判断においても反映すべきである。

ステップ2

第6章 地域分析及び個別分析

対象不動産の地域分析及び個別分析を行うに当たっては、まず、それらの基礎となる一般的要因がどのような具体的な影響力を持っているかを的確に把握しておくことが必要である。

第1節 地域分析

Ⅰ 地域分析の意義

地域分析とは、その対象不動産がどのような地域に存するかその地域はどのような特性を有するか、また、対象不動産に係る市場はどのような特性を有するか、及びそれらの特性はその地域内の不動産の利用形態と価格形成について全般的にどのような影響力を持っているかを分析し、判定することをいう。

Ⅱ 地域分析の適用

1.地域及びその特性

地域分析に当たって特に重要な地域は、用途的観点から区分される地域(以下「用途的地域」という。)、すなわち近隣地域及びその類似地域と、近隣地域及びこれと相関関係にある類似地域を含むより広域的な地域、すなわち同一需給圏である。

また、近隣地域の特性は、通常、その地域に属する不動産の一般的な標準的使用に具体的に現れるが、この標準的使用は、 ①利用形態からみた地域相互間の相対的位置関係及び価格形成を明らかにする手掛りとなるとともに、 ②その地域に属する不動産のそれぞれについての最有効使用を判定する有力な標準となるものである。

なお、不動産の属する地域は固定的なものではなく、地域の特性を形成する地域要因も常に変動するものであることから、地域分析に当たっては、対象不動産に係る市場の特性の把握の結果を踏まえて地域要因及び標準的使用の現状将来の動向とをあわせて分析し、標準的使用を判定しなければならない。

(1)用途的地域

① 近隣地域

近隣地域とは、対象不動産の属する用途的地域であって、より大きな規模と内容とを持つ地域である都市あるいは農村等の内部にあって、居住、商業活動、工業生産活動等人の生活と活動とに関して、ある特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを示している地域をいい、対象不動産の価格の形成に関して直接に影響を与えるような特性を持つものである。

近隣地域は、その地域の特性を形成する地域要因の推移、動向の如何によって、変化していくものである。

② 類似地域

類似地域とは、近隣地域の地域の特性と類似する特性を有する地域であり、その地域に属する不動産は、特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを持つものである。この地域のまとまりは、近隣地域の特性との類似性を前提として判定されるものである。

(2)同一需給圏

同一需給圏とは、一般に対象不動産と代替関係が成立して、その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域をいう。それは、近隣地域を含んでより広域的であり、近隣地域と相関関係にある類似地域等の存する範囲を規定するものである。

一般に、近隣地域と同一需給圏内に存する類似地域とは、隣接すると否とにかかわらず、その地域要因の類似性に基づいて、それぞれの地域の構成分子である不動産相互の間に代替、競争等の関係が成立し、その結果、両地域は相互に影響を及ぼすものである。

また、近隣地域の外かつ同一需給圏内の類似地域の外に存する不動産であっても、同一需給圏内に存し対象不動産とその用途、規模、品等等の類似性に基づいて、これら相互の間に代替、競争等の関係が成立する場合がある。

同一需給圏は、不動産の種類、性格及び規模に応じた需要者の選好性によってその地域的範囲を異にするものであるから、その種類、性格及び規模に応じて需要者の選好性を的確に把握した上で適切に判定する必要がある。

同一需給圏の判定に当たって特に留意すべき基本的な事項は、次のとおりである。

① 宅地
ア 住宅地

同一需給圏は、一般に都心への通勤可能な地域の範囲に一致する傾向がある。ただし、地縁的選好性により地域的範囲が狭められる傾向がある。なお、地域の名声、品位等による選好性の強さが同一需給圏の地域的範囲に特に影響を与える場合があることに留意すべきである。

イ 商業地

同一需給圏は、高度商業地については、一般に広域的な商業背後地を基礎に成り立つ商業収益に関して代替性の及ぶ地域の範囲に一致する傾向があり、したがって、その範囲は高度商業地の性格に応じて広域的に形成される傾向がある。また、普通商業地については、一般に狭い商業背後地を基礎に成り立つ商業収益に関して代替性の及ぶ地域の範囲に一致する傾向がある。ただし、地縁的選好性により地域的範囲が狭められる傾向がある。

ウ 工業地

同一需給圏は、港湾、高速交通網等の利便性を指向する産業基盤指向型工業地等の大工場地については、一般に原材料、製品等の大規模な移動を可能にする高度の輸送機関に関して代替性を有する地域の範囲に一致する傾向があり、したがって、その地域的範囲は、全国的な規模となる傾向がある。また、製品の消費地への距離、消費規模等の市場接近性を指向する消費地指向型工業地等の中小工場地については、一般に製品の生産及び販売に関する費用の経済性に関して代替性を有する地域の範囲に一致する傾向がある。

エ 移行地

同一需給圏は、一般に当該土地が移行すると見込まれる土地の種別の同一需給圏と一致する傾向がある。ただし、熟成度の低い場合には、移行前の土地の種別の同一需給圏と同一のものとなる傾向がある。

② 農地

同一需給圏は、一般に当該農地を中心とする通常の農業生産活動の可能な地域の範囲内に立地する農業経営主体を中心とするそれぞれの農業生産活動の可能な地域の範囲に一致する傾向がある。

③ 林地

同一需給圏は、一般に当該林地を中心とする通常の林業生産活動の可能な地域の範囲内に立地する林業経営主体を中心とするそれぞれの林業生産活動の可能な地域の範囲に一致する傾向がある。

④ 見込地

同一需給圏は、一般に当該土地が転換すると見込まれる土地の種別の同一需給圏と一致する傾向がある。ただし、熟成度の低い場合には、転換前の土地の種別の同一需給圏と同一のものとなる傾向がある。

⑤ 建物及びその敷地

同一需給圏は、一般に当該敷地の用途に応じた同一需給圏と一致する傾向があるが、当該建物及びその敷地一体としての用途、規模、品等等によっては代替関係にある不動産の存する範囲が異なるために当該敷地の用途に応じた同一需給圏の範囲と一致しない場合がある。

2.対象不動産に係る市場の特性

地域分析における対象不動産に係る市場の特性の把握に当たっては、同一需給圏における市場参加者がどのような属性を有しており、どのような観点から不動産の利用形態を選択し、価格形成要因についての判断を行っているかを的確に把握することが重要である。あわせて同一需給圏における市場の需給動向を的確に把握する必要がある。

また、把握した市場の特性については、近隣地域における標準的使用の判定に反映させるとともに鑑定評価の手法の適用試算価格又は試算賃料の調整等における各種の判断においても反映すべきである。

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